丁度1年前、浜益岳の山頂から初めて見た群別岳(1376.3m)はまるで槍ヶ岳の矛のように鋭く尖がり天をを突いていた。
来年は群別だね!と言う同行者の言葉に、ウンと曖昧に返事をしたけれど、とても自分の手に負える山とは思えなかった。
直後、群別敗退をつづったブログでマスマス遠い存在に思えた。
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浜益岳から見る群別岳  増田の沢ルートは反対側

GWにどこか登ろうと、“昨年の同行者”iwaさん、marikkaさんが声を掛けてくれた。1ヶ月以上も本格的な山から遠ざかっていて体力的には不安だったが、かって知ったる二人だし・・・甘えさせてもらうかと返事。
登る山探しのやり取りをメールでしてるうちになんだか怪しくなってきた。“群別岳”・・・本気かぁ?!

タイミングよく(?)頂上直下のトラバースでビビリまくって50m~80mを残して敗退したとのHYML報告。その書き込に刺激されたのか・・・(は定かじゃないが)、marikkaさん めらめら燃え上がる。でっ、群別岳に決定!
メンバーもpeiさん、kennさん、そしてシラネアオイさんも加わり超強力に、反面ブランクへの不安がよぎるが、“最後は気持ちさ”と自分に言い聞かせる。

5月3日朝6時30分、林道の雪の関係で予想よりズッと手前、標高110m地点からの出発となる。距離は途方もなく長く、標高僅か1300m余の山にもかかわらず、高低差1250mを稼がなければならない。
殆ど平らな林道を進む、雪解けの流れや雪崩のデブリが林道を塞ぎ何度か板を担だりしながら緩やかな林道を奥へ奥へと進めど、高度計の針はナカナカ数字を増やしてくれない。天気は曇りだが気温は低くはない、iwaさんは早くも半袖に。
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          長い長い林道歩き

歩きだしてそれ程立っていないのに、左膝上の筋肉内側が引きつりだす。左足に体重を掛けるたびに違和感を感じるが、急な登りではないので、辛うじて違和感程度で済んでいるが登りになったら“つる”のは確実という状態。先は長そうだし、はてさてどんなことになるのかと不安に感じつつ進む。
しらリーダーが、ゆっくりゆっくり、大丈夫13時には頂上に立てるからと上手くパーティー全体を誘導、これで助かる。

やがて長かった林道が終わり、急斜面のトラバースから沢の渡渉といよいよ本格的な登りとなる。短いが急な斜面を直滑降で下ってその勢いでスノーブリッジを渡って左岸の急斜面を登ると、ピンクテープが多数ぶら下がった尾根上に。
ここからますます しら名リーダの本領発揮、“10分で1分”の掛け声。ゆっくり10分登って1分立ち止まって呼吸を整える、この登り方はかなり参考になった。急斜面と言うほどではないが、高度計が上り始める。時折とんでもなく太い木が雷にでも打たれたのか 倒木となって朽ち掛けている。根の周りの雪がとけ絶好のビバークサイトに見える。つりかけた腿の筋肉がいよいよ苦しくなってきて、この穴だとツエルト被って待っていられる等と、迷惑をかけないということだけが頭を回る。
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     渡渉地点          熊の平           増田の滝

何とか尾根を登りきると正面が開け熊の平に到着。ツボ足で先行する3人パーティーのトレースは奥徳富に向かっている。トレースと別れやや左に折れたところでいよいよ足がパンク、薬を飲もうとザックを置くと、ナントしらリーダーが生ゴムチュウブを取り出し両太腿にきつく巻く様にと貸してくれる。結果このゴムチューブのお陰で何とか南峰には辿り着くことが出来たのだ・・・。

効率の良さそうなルートを探りながら 雪に埋もれた小さな沢筋を幾つか越えて熊の平の開けた雪原進み、増田の沢右岸の斜面に取り付きトラバース気味にしらリーダー、peiさんと3人で進むが、増田の沢に降りて進む3人から前方の斜面に亀裂があるので前進は無理そうとのコールで増田の滝の150m位下流か?沢に降りる。水量豊富な滝音を聞きながらスキーアイゼンを着装。いよいよ南峰と1079mPとのコルを目指しての急登が始まる。

ゴムチュウブで何とかごまかしてはいるが、両太腿が苦しく皆に先行してもらう。増田の滝上の急斜面は前夜の新雪とザラメ斜面が交互に混じり スキーアイゼンで滑ることはないがザラメ雪部分では時々エッジが流れる。
先行の5名は、思い思いに斜面を選んで登っている様でトレースが何本も交錯しており、斜度の緩そうなトレースを選び、歯を喰いしばって少しずつ少しづつ高度を稼ぐ。
ゴムチュウブをきつく巻いた腿が痙攣を起こし、何度も立ち止まる。左腿の痙攣した筋肉が少しほぐれ 再び登はじめると今度は右足が痙攣。痙攣が起きているときは全く身動きとれないが、何とか収まって登ると情けないことに、今度は息が上がる。痙攣で止まり、息が上がって止まり、止まっている時間の方がズーット長くなる。

待っていてくれたのかpeiさんがザックそ置いて休んでいる。peiさんのところまで頑張ろうとトレースを外れて進むと、板に体重を掛けたときになんともいえない低く響くような音がする、ナンダ??? 首を傾げながら進むと又音が??? peiさんに訴えるが聞こえないと言う。だがそれは“ワッフ音”だろうと教えてくれる。なんとも気持ちが悪い、こんな斜面早く抜けたいと二人並んで木の生えているほうに向かう。
とっ、立ち止まった瞬に雪面全体が沈んだが、それは右後方のpeiさんが板に体重を掛けたときで、peiさんも 私が沈んだがはっきりわかったいう。早くこの斜面を抜けたかったが、相変わらず登っては休み登っては休みを繰り返す。頭からはとっくに“頂上”の二文字消えて、せめて稜線にだけは立ちたいと稜線の二文字がグルグル回る。痛さに立ち止まり、思い出したように振り返るといつの間にか尾根と尾根の間から箱庭のような集落と、その先に海が輝いて見える。
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   ワッフ音斜面        稜線目指して      振り返れば日本海

やがてpeiさんが稜線に上りきり、動き回る人影も見える。ゆるくなった斜面をよたよたと稜線に上ると、そこには全員がザックを下ろして休んでいた。私が稜線に上ってくるのを辛抱強く待っていたのだろう。

行かれたら行くので先に行って欲しいと言うと、待ち構えていたように全員南峰目指して登り始める。何とか頂上に行って欲しいと思う気持ちと、遅れた言い訳をしないですんだのとで、ちょっとホッとする。
改めて広々としたコルから見上げると、正面には特徴ある岩壁が屏風のように横長に伸びてその下は傾斜のある雪原が谷底に向かって落ちているのが見え、五つの点が南峰に伸びる斜面に思い思いのシュプールを刻んでいる。左上に先行してルートを探っているのが しら名リーダー、右に独自のルートを進んでいるのがkennさん、真ん中を3人が横に並んで登っている。
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    南峰目指して       トラバース

行かれたら行くとは言ったが、このコルから一歩も動く気は無かった。せめて南峰を登る皆の勇姿を写真に取ろうと一生懸命にシャッターを切る。やがて五つの点が屏風のような岩峰の下の雪の斜面をトラーバースに移る。コルから見ていると高度感がある様に見える。そこが核心なのかその先に核心があるのか・・・わからない。今日の仲間の何人かはきっとドキドキしながら歩いているのだろうなぁ!
群別岳の山頂はここからは見えない。幌天狗の稜線も奥徳富の稜線も白い雲に隠れているが、上空には綺麗な青空が広がている。コルから頂上まではまだ300m高度差だ。


5つの点が雪の斜面から消えると急に空腹を感じ、辺りを見渡すとお誂え向きの曲がった木が何時間ぶりかで本格的に腰を下ろすと土踏まずが兼用靴の中で痙攣するが、ここで待つことに決めたので全く苦にならない。
セブンイレブンのカニ風かまぼこ押し寿司が、初めて食べるガーリック味のしょうゆラーメンと絶妙にマッチ,実に美味い。ここまでよく来たものだ、頂上には立てなかったが、それなりに頑張ったよなと穏やかな気持ちが湧いてきた。デザートに久しぶりの羊羹、実に美味い。

お腹が膨れて余裕も出てきて、周りを歩き回って写真を何枚か撮る。相変わらず日本海が綺麗だ。
これから長い下りがあるし、皆に迷惑をかけないように降りなければ・・・、シールを外して下山の準備をしてからゆっくり休もうと、ザックを整理しながら思った、このままシールを外しちゃっていいのか・・・?!

目の前に聳える南峰まで登ってみよう、帰りの温泉で皆との会話が少しは弾むように、せめて南峰までは何とか登って鋭鋒・群別の勇姿を拝まなければ!ザックをデポしてとも思ったが、空身で行く気にはならなかった。整理し終わったザックを背負って板を履いた。


南峰への登りは思ったよりきつくなく、スキーアイゼンがきいて登りやすかったが、休息をとったはずの太腿の筋肉が再び痙攣を起こし何度か立ち止まっては歯を喰いしばった。
時計は2時を完全に回っている。この時点でもまだ皆が群別岳の頂上に立てたのか 半信半疑だった。せめて南峰に登りきるまでは降りてきて欲しくなかった。突然ヒョッコリと顔を出すのではないのかと気になってしょうがなかった。皆と出会った所が引き返し地点だ。せめて群別の勇姿を拝まなければ!!
岩壁の基部についたが、まだ降りてこない。基部の雪の斜面をトレースにしたがってトラバースするが、斜度は全く問題なし。益田の滝上部の斜面の方が何倍も緊張する。目の前にどんな景色が展開するのかと気になりながらトラバースを続けると、雪面に突き刺したスキーと転がされたザックが目に入り、その先の斜面にはやや上に向かったトレースと下に水平に伸びたトレースが目に入り、その先を目で追うと、山頂に一人の人影と、まさに直下を登る一団が目に入る。
まだ登っているのだ!!!  ついに頂上に立つんだ!!!

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     直下を登る      ついに山頂煮立つ

自然と笑みがこぼれる。慌てて写真を取り出しズームにして何回もシャッターを切る。
やがて一団が頂上にたったのがわかった。歓喜の声がかすかに聞こえたような気がした。こちらに気がついたのか皆手を振っているのがわかり、大きく手を振り返す。又はるか頂上写真を撮って、トレースに目を移す。想像よりズーット易しそうに見える雪面に続くトレースを目で追いながら、ピッケルをザックから外してアイゼン着けるかと一瞬迷うが、今日はもうこれでいいヤァ!とザックに腰掛け水を飲む。久しぶりに美味い水を飲んだが、やはりちょっと苦かった。

やがて下山が始まり一旦コルに消えた4つの影が再びトレースの向こうに現れどんどん近づいてくる。もう一つの陰はテレマークスキーで山頂まで登ったkennさんだった。先に着いたkennさんが、「そうだっ!」といいながらザックからテルモスを取り出し、ちょっと甘めで、ぬるくなりかけたミルクティーを蓋に入れて差し出してくれた。

次々と満面の笑みで降りてくる仲間と握手、みんな頂上に立ってて本当に良かったと思うと同時に、山頂に立てなかったけれど、こんなに深い山へのリベンジをする気は無い!と思った。

【結び】
すでに3時を回っていたがピーカンの青空のもと、コルに向かって軽やかに滑る仲間に混じって思い切りよくスキーに乗る。スキーは調子いい!コルからは気持ちの悪い“ワッフ音”斜面を避けるように疎林帯を増田の沢めがけてどんどんと下る。今回のメンバーは全員スキーが上手い!せめて下りでは迷惑をかけたくない!
ザラメで重い雪質が結構な急斜面と程よくマッチしてスリリングで楽しい下りが続いた。
増田の沢で再びシールを付け熊の平を目指す。奥徳奥との分岐に戻って振り返ると南峰の岩の奥に群別岳がくっきりと見える。再びシールを外して尾根を下り渡渉点を越えると長くて平らな林道がどこまでも続く。
夕方6時15分、やっとのことで車に辿り着く。11時間と45分の長い一日だった。

前々日、浜益岳と雄冬山をまとめてやっつけた シラ名リーダーのなんと心強かったことか。その名リーダーが別ルートとは言え、7回もの敗退を繰り返し、実に8回目にして初めて群別の頂上にたったとは信じられない話だ。今回の山行の企画、マネージメントのiwaさんは毎度ながら明るいキャラクターで存在感があり、皆を盛り上げ実に楽しいパーティーに仕上げてくれた。peiさんは増田の滝からの“ワッフ”斜面では気持ちが折れそうになったんだと後でソット教えてくれたが、根性出して頂上に立ち、真っ先に降りてきたパワーはさすが。行きの車中、“一発で決める”と宣言したmarikkaさんに二言無く今回も敬服だ。寡黙だが、山頂までスキーで登り下ったテレマーカーkennさんは恐ろしいほどの実力の持ち主だった。
実に素晴らしいパーティーで不完全燃焼ながらも思い出深い山になることだろう。でもリベンジという感情は今のところ湧かない。ブランクがちょっとだけ恨めしかった。     
【 完 】





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2011.05.03 / Top↑
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