午前3時、早立ちのパーティーの目覚ましが鳴る。ヒサゴの避難小屋は想像以上に快適だった。

つい先だって、悪天候の中、ヒサゴの避難小屋からトムラウシに向かったガイド登山のパーティーが疲労と寒さで遭難、ガイドを含む8名死亡という、前代未聞、信じられない事故が起きたが、なるほどあの稜線で強風雨に打たれたら、かなりキツかっただろう!けれど、なぜ戻らなかったのか、死に至ることは避けられたのでは・・・。昨日,同じ道を辿りながらつくづくと思った。

明け方小屋をたたく雨音を聞いたが、朝食を終えて外に出ると朝陽が眩しかった。太陽を見るのは何日ぶりだろうか。沼越しに見る東大雪の山々をバックに誰もがカメラを取り出したくなる、気持のよい青空が広がった朝だった。
 P1000438.jpg P8160132.jpg 
遥か彼方に東大雪の山々    ヒサゴ沼   

下山に備えて飲み水を補給をしなければと話していたら、下るだけなのでと同年代のご夫婦が水を分けてくれる。汲みに行かなくて済むのでありがたく頂戴する。量にチョッピリ不安があったが横着をして最後にチョッピリ苦しむ羽目に・・・。

いよいよ出発という時に、若い女性から声を掛けられる。
「12日に小樽・赤岩でクライミングをしていた方ですね」
「私もいました!」  
「 エッ!!  じゃ不動岩稜を登っていた女性2人パーティーの・・・?」
   
P8120070.jpg 小樽・赤岩 東のチムニー岩の頭に立っている彼女
「そうです!峠の駐車場でも会いました!」  
「ウン、ウン!どこかの“会”に入っているの?」
「ハイ!“R”です!」
「やっぱり!こんな日に女性だけで登っているので、きっと“R”だよ!って話していたんだけれど・・・赤岩、よく行くの?」
「ショッチュウです!」
「じゃ、そのうち又会いますね!」

昨日の夕方、大きな荷物を背負って最後に避難小屋に入ってきた単独の女性だった。
若いのに頑張るなと印象に残っている。長く登っていると時々思わぬ偶然に遭遇する。
これからは、赤岩峠の広場にたまっている人がチョッと気になることになりそうな出会いだった。


ヒサゴ沼  →  化雲岳  →  第一公園  →  滝見台  →  天人峡
  6:00       7:30       11:00       12:40     13:15

P8160135.jpg P8160133.jpg 100_0148.jpg 100_0150.jpg
昨日までとはうって変わって、とても爽やかな晴天のヒサゴ沼を後に、花畑の中を化雲岳を目指す。

7時半、化雲岳の山頂に到着。なんと39年ぶりの山頂だ。

私は特徴のある岩峰の上で、当時はやっていた赤塚富士夫の“シェー!”のポーズで写真を取った。
今でもアルバムに張ってある。39年ぶりにもう一度!! 岩峰によじ登る。 

P1000446.jpg P1000443.jpg
    “シェー!”      振り返ればトムラ

日高・カムエクで福岡大WVのヒグマの事故のあった年の8月、初めて北海道の地を踏み、広大な大雪の山々をキスリングを背に縦走し、憧れのトムラウシに登り、今日と同じルートで天人峡に下る。
39年後の今日、3人とも歳は取ったが若い頃と同じように元気に大雪の山懐を歩いている。遠い昔だったような、ついこの間の事だったような・・・。色々な事を思い出す。そして、その何倍もの事を・・・もう思い出せない。


昨日までの緊張感から開放されて、雄大な大雪の縦走路を歩く、天人峡までの長い下りは覚悟していたが、登ってきた事を思えば下りは楽だよと言い聞かせて、景色を楽しみながら歩を運ぶ!
ポン化雲の登りでルート上に立派なヒグマの糞が。雄大な景色にヒグマもノンビリ昼寝でもしている事だろう。
P1000448.jpg P1000447.jpg 
 ポン化雲へ一本道が    ヒグマの落し物

長澤プロは相変わらず立ち止まっては地図で現在地を確認し、又私に追いついてくる。50m以内の誤差で現在地を確認できるという。地図読みに興味を持った私にコンパスの事や地図の使い方など説明してくれる。降りたら早速シルバーコンパスを買おう。

下るにしたがって気温も上がり暑くなる。足場が悪いうえに 疲労がこたえて、皆足を取られてバランスを崩す。とっ!長澤プロが尻もちを着いたとたんに、ザックの中で音楽が鳴り出す。携帯が鳴っていると思った時、全てを理解した長澤が“ヤバイ!!”と叫ぶ。ザックで鳴っているのは“ハッピーバスデー”の曲だった。
私は12日、小樽のキャンプ場で、還暦の誕生日を迎えた長澤プロに、火を付けると“ハッピーバスデー”の曲が流れるローソクをプレゼントした。そのローソクが突然ハッピーバスデーのメロディーを奏でだしたのだ。どうやら熱に反応して音楽が鳴り出すからくりの様だ。蝋燭はザックの奥深くに大事にしまわれて九州・長崎まで持ち帰られるところ、取り出すことは出来ない。ハッピ-バスデーの曲を鳴らしながら着いてくる長澤プロに、「うるさいから、離れろ!」と冷たく言い放つ。日陰で休むと鳴り止み、日向を歩くと又鳴る。実によく出来たローソクだ!。しばらく3人の頭の中でハッピーバスデーの曲がぐるぐる回っていた。

第一公園には立派な木道が敷かれ、紫やピンク、黄色い高山植物が実に綺麗だ。
長い下りにうんざりする頃、忠別川を挟んで羽衣の滝が、立派な滝だ!
P1000451.jpg P1000454.jpg
  花に囲まれ      羽衣の滝をバックに

最後のジグを下りきれば、長かったクワウンナイ川の沢旅が終わる。


村山リーダーは、さすがに沢専門の山岳会でもまれただけの事はあり、初見の沢でも 慣れた行動は実に頼もしかった。長澤プロは一度たりとも私の前に出る事はなく、一言も注意を促がす言葉も、励ましの言葉も飲み込んで、終始私の後ろに付き、無言でサポートしてくれていた。
二人にしっかりガードされ、自分の事だけに専念できた為、さしたる迷惑もかけずに(?)歩き通せてホッとし、そして感謝している。
しかし、正直な気持、大きな山行だったにもかかわらず、不完全燃焼というか、想像していた達成感を味わう事が出来なかった。どこかお客様のようで、主体的に登る事が出来なかった為だろう。
もう一度、今度はスッキリ・・・登りたい・・・・!

【完】





 
スポンサーサイト
2009.08.19 / Top↑
まとめ